災害件数が過去最高の100件を超える勢い

労働災害実態調査から
2007年8月8日
 
   北海道ゴルフ場労働災害防止対策推進協議会(龍嶋浅雄委員長)がまとめた労働災害実態調査によると、今期(平成19年4月1日〜6月30日)の災害件数は29件と前年同期の23件を上回るハイスピードで推移している。
災害件数は平成15年度以来年々増える傾向にあり、単純に予測すると今期は災害件数が過去最高の100件を超える勢いである。(3ヶ月で29件、12ヶ月で116件)

 ここ数年ゴルフ業界は入場者数や客単価の減少がつづき低迷を極めており、その改善策として固定比率の高い従業員のリストラが行われた。平成15年に1コース平均73名いた従業員が平成18年には65人、平成19年では59人まで減っている。災害件数はこれに反比例して増えている。
 近年の傾向として、災害の程度別では比較的軽度の災害が増え、職種別では「コース管理」「その他」が、原因別では「行動」の増加が挙げられる。つまり、従業員数は減ったが仕事量は変わらず、一人何役もこなすため集中力が欠け災害に至った、あるいは適切な教育がされていないパート・アルバイト等が単純なミスを犯し災害に至った、ということではなかろうか。

 「大事故ではないが『うっかりミス』による災害が増えている。『うっかりミス』は従業員の意識を高めることによって十分に防ぐことが出来る。防災マニュアル等を作成して全従業員が皆同じレベルで注意事項を確認する。事故は忘れた時にやって来る」、と語るのは労働災害防止対策推進協議会委員長の龍嶋浅雄氏(札幌GC由仁コース支配人)。
 同コースでは「安全衛生管理計画書」を作成しており、これに基づいた「事故発生時連絡網」をはじめ、「コース内での急変者対応マニュアル」「コース作業機械安全マニュアル」「キャディコース安全マニュアル」など各種マニュアルを整備しており、シーズン初めには全員で講習会を開催している。結果として同コースでは3年間休業に至る労災事故は発生していない。

 いったん災害に見舞われると営業の停滞やゴルフ場のイメージ・信頼性など様々な面で売上の妨げになることは言うまでもないが、労災保険(労働者災害補償保険)でもダメージを受けることがある。
 労災保険の保険料は事業主が全額負担しており保険料の額は、その事業で使用するすべての労働者に支払う賃金の総額に、労災保険率(ゴルフ場は0.7%、平成18年〜平成20年)を乗じて算定される。この労災保険率は過去3年間の災害率によって定められる。 加えて、労災保険率にはメリット制という制度があり、同じゴルフ場でも労災の多寡(収支率)によって労災保険率が最大で40%減少させることが出来る反面、最高40%高くなる場合がある。最悪の場合1.4倍の保険料を納めることになる。メリット制は最低労働者数が定められており、ゴルフ場では65名以上の事業所が該当する、というものである。
 つまり、正社員・アルバイト含め65名以上の従業員のいるゴルフ場で、大きな労働災害を発生させたとか労働災害が多発している事業では労災保険率が高くなり、逆に労働災害が少ない事業では労災保険率が低くなる制度である。

 労災保険率を下げるために従業員の意識改革・高揚を図るというものではない。事態はもっと深刻で万が一、死亡事故でも起こそうものなら、サービス業としてのゴルフ場のイメージダウンは計り知れないものになることは必至である。そのためにも普段から不断の「安全教育」は欠かせないものになろう。

 なお、札幌GC由仁コースで使われている各種マニュアル類は龍嶋浅雄支配人のご好意で公開してくれる。